かけはし No.319
14/24

- 14 - 私は2015年2月、ケンブリッジ大学に視察に行った。ケンブリッジ大学障害リソースセンター長のハーデング ジョン氏に会うためだった。ロンドン空港から90マイル、バスで3時間(車でも1時間半以上)かかる。 ケンブリッジ大学は、31のカレッジ制である。カレッジは「学寮」とも訳され、全ての学生は学部生・大学院生を問わず、どこか必ず1つのカレッジに所属することになっている。カレッジは教師教員と学生が寝食を共にする場所という感じだろうか。 学部生の入学者選抜はカレッジ毎に行われ、一部の学科を除いてAレベル試験の成績の他に、面接試験で判定される。学部生の教育は、伝統的にはカレッジで教員と学生の1対1で行われていた。こうしたカレッジで行われる指導を「チュートリアル(tutorial)」と呼び、チュートリアルをする教員を「チューター(tutor)」と呼ぶ。現在ではこのチューターは生活面で学生の支援をする教員という存在となっている。。 現在の講義はカレッジではなく、学部・学科が中心となって行われている。講義には2つの形態があり、1つは学部・学科の提供するもので多くの学生が集まって聴講する講義形式の授業、もう1つはカレッジの責任で行われる「スーパービジョン(supervision)」と呼ばれる個人または少人数制がある。各カレッジには科目毎に学習指導教員 (Director of study) がおり、学習指導教員は学部・学科から推薦された教員・研究員・大学院博士課程の学生の中から、学生ひとりひとりに「スーパーバイザー (supervisor)」と呼ばれる指導教員を任命する。スーパービジョンでは文科系の場合、与えられた課題に対して小論文 (essay) を事前に提出し、その小論文について指導教官が添削したものを学生と議論しながら指導していくという形式を取ることが多いようだ。 学部生の教育は、このようにカレッジが大きな役割を担っているのに対して、大学院生の場合には研究科(学部・学科)の存在が大きくなる。大学院においても修士課程や博士課程の初年度には講義が行われる場合が多いが、その勉学・研究活動の中心は指導教官とのスーパービジョンにある。学部生の場合とは異なり、大学院のスーパービジョンは現在でも1対1での指導となる。また、スーパーバイザーの選択はカレッジの学習指導教員でなく、それぞれの研究科の責任で実施される。したがって大学院生にとってカレッジは、寝食や福祉・社交の場の提供がその存在意義となっている。 イギリスの社会福祉の理念に影響を受けているため、イギリケンブリッジ大学からのつながり国際教育交流センターアドバイジング部門 ソーシャルサービス室 坂野尚美留学生と話そう! 異文化を語ろう!(4)ケンブリッジ大学障害リソースセンター長 ジョン氏と

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です