かけはし No.318 送別特集
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22年間の名古屋大学勤務を終え、この3月で定年退職を迎えます。学生・院生としての在籍年数を加えると、30年以上にわたる名古屋大学との係わりでした。お世話になった皆さんに深く感謝致します。その間、生協書籍部とその理系図書担当であった森川さんにもお世話になりました。この機会を借りてお礼を申し上げます。70年代初め頃は、栄・丸善に定期的に洋書を見に行っておりましたが,大学院を終える70年代末には、書籍部の理系洋書も充実し、その必要もなくなりました。森川さんら担当者のご努力の結果と思います。 今はネットからの書籍購入が多く、手に取ってから購入を決めるのは、私のような旧世代に限られるようです。私の息子も“南米の大河”利用者ですが、適切な内容確認後の購入には見えません。将来の姿として、かつて学生会館の片隅にあった時代も想像しますが、書籍店舗は維持してほしいものです。現況としては、漫画本の占有面積が漸増していることは気になります。でも、昨年末には、店舗入り口にピケティの話題の書が積まれており、直ぐに購入し、正月休みの楽しみとしました。 自然科学の分野で何か一仕事をしたい。だが、その何かは茫漠としている。そんな思いで学生時代をスタートさせ、現実的な自ら道のりを探ることで大学院生時代を過し、今に至りました。その間、「教師」を率直に信用しない「戦後ベビー・ブーム世代」の私には、色々な書籍に接することで、「心の師」とできる何人かの先達と出会いました。明解な議論に励まされたのは勿論ですが、その先達の自伝・伝記では、励ましや慰めの言葉も得ることもできました。一例として、朝永振一郎著「量子力学と私」岩波文庫 149 p。滞独日記(抄)の記述から、朝永先生でも「狂わんばかりに悩む」時があったことを知り、自分が思い悩むは当然との「心の安定」を得たことを今も思い出します。 いつまでも読む側ばかりに居ることは許されないので、この十年間は、幾つかの理系基礎「自己流講義録」を記し,中央図書館Nagoya Repositoryの電子媒体で2012年から公開しています。自らの研究は「希土類の化学〜量子論、熱力学、地球科学〜」と題して、名古屋大学出版会から出版予定となりました。この十年で約3000頁分を記しましたが、退職後も執筆を続け、著者と読者との両方の立場を、生きる「楽しみ・糧」とするつもりです。(かわべ・いわお)川邊 岩夫環境学研究科 教員読者として楽しみ、そして著者としてもⅣ

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