かけはし No.311
16/28

- 16 -言歯魔 何をするにも、それに適した服装が要る。着物を着たまま自転車には乗りにくい。大工さんや鳶職の人たちはダブダブのズボン、いわゆるニッカボッカーズと言うのをはいている。広辞苑によれば、このニッカボッカーズは、ゆったりしているので登山やゴルフに用いるとある。今はあまりそういう場面では見かけないけれども。 坊さんは姿を見ればすぐ分かる。牧師さんも同様である。 スポーツ選手にはそれぞれのユニフォーム、コスチュームがある。その姿を見れば何をやるのかだいたいの想像が付く。もちろん時代的な変遷はある。古いオリンピックの写真では男子の水泳選手も上まであるのを着ていてレスリングの選手と見まがう。野球の選手の姿、アメリカンフットボールの選手の姿は 歯には苦労する。若い頃、人間、年と共に歯・目・…という順に駄目になるというのを聞いていた。確かに、歯も目も悪くなる。ついでに、耳も遠くなり、口も悪くなるが、歯のことだけにしよう。 子供の頃、総入れ歯の人を見ていてとても便利なものだなぁと思ったこともある。そんなものでないことは、今は知っている、使ってみなくても、想像してみれば分かる。先ず、なかなかピッタリしないだろう、ピッタリしないから痛いだろう。そうでなくても、固い物は食べられないし、味も良くは分からないと思う。ゴミもたまるだろうから、よく掃除しなければならない。掃除はしやすいかも知れないけれども。よく、コップなどに入れ歯が入っていて、気持ち悪いなと思ったこともある。母は始終それを外してポケットなどに平気で入れていた。誰か、人でも来ると大騒動。歯を入れずには、みっともなくて人に会えない。ポケットにないと、一体どこに行ったかとよく探していた。 それはともかく、私は、幸か不幸か、入れ歯はないが、かぶせものがしてあるのは一杯。不用意に飴でも食べるとぽろっと取れる。一々歯医者に行くのが面倒で、洗ってそのまま嵌めておくと、それで長らく納まっている場合もある。またまた直ぐ外れて困るときもある。いつも行く歯医者さんは予約しておいても、先ず時間通りにはいかない。文句を言っても仕方がないのだが、時間を予約する以上、いくらどうでも、一時間も遅れては何の意味もない。何処の病院でも似たようなものらしい。ただ、最近そうでもない所もあり、そうでなければと思う。 先日も、ぽろっと取れてしまいいつもの歯医者さん。親切な所だ。最後だったので、ゆっくり話をした。私が一生懸命磨いているのだけれども、中々うまくいかないと言ったら、マスクを取ってご自分の歯を見せてくれた。白い、綺麗な歯だった。さすがと思った。間食はなさらないという。三食ごとに15分の歯磨き、また定期的に歯石を取るのだと仰有る。それだけ手間を掛けなくてはならないのだ。その時こう思った。我々は、歯のために生きているのではなく、歯が我々が生きていくためにあるのだと。歯医者さんにとっては、大げさに言えば、歯こそ第一なのだろう。それはそうでなければいけないのかも知れないが、普通そんなことはしておれない。 我が兄は歯槽膿漏ですんでの事で歯が全部駄目になるところだったという。ブラッシングを勧められ、毎食後は勿論、暇さえあれば、歯ブラシを携帯していて所嫌わずブラッシングをしていた。兄のことを、あの、歯を何時も磨いている人かと、言われたことがある。そのくらい徹底しなければならないのかも知れない。歯は大切だと思う。歯こそが健康の元で、歯を大事にしなかったばかりに酷い目にあった事例を身近に知っている。しかし、やっぱり、歯のために生きているのではないと、どこかでそう思ってしまう。それではいけないのだ。 最近、今までよく具合の悪くなった数本の歯をインプラントにして貰った。三年がかりだったが、ようやく落ちつき、実に快適である。歯医者さん曰く、治した歯はいいけれど、そうでないのが又悪くなるからと注意してくれた。いつまでも歯には苦労させられるのだ。尤も、生きていく上で、物を食べるのが第一だから、歯を粗末には出来ないのだけれども。(T)衣装

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です