かけはし No.308
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- 12 -- 12 -言魔 私は、この3月末を以て、勤めていた大学を定年で退職した。3月30日が土曜日、31日が日曜日ということもあったのだろう、29日に出勤したときには私のメールボックスがすでに撤去されていて、もう、無かった。 よく人に長年勤めていた大学を退職することに対して淋しくないかと聞かれた。でも、特別淋しいという感慨はなかった。その理由を言うと憎まれ口になるので控えるが、とにかく、退職すること自体、もう、授業をすることがないということ自体に対しては不思議に淋しさを感じることはなかったのは事実である。 部屋の鍵や、身分証などを返却するのは当たり前のこととして、ほとんど事務的に済ませた。しかし、考えてみれば至極当然なことなのであるが、メールボックスが在籍中に無くなっていたということに対しては言いようのない淋しさというかむなしさを覚えた。 これは一寸不思議であった。何故だろうかと考えてみた。本当のところは分からないけれども、自分の居場所が無くなるということと関わりがあるように思える。相変わらず、日曜日には相撲を取りに勤めていた大学まで出掛ける。しかし、ちょっと自分の研究室によって、物を取ってくるとか、置いてくるとかということが出来なくなった。おまけに、日曜日には、セキュリティーの関係で、身分証がないと校舎の中にも入れなくなった。特に用事があるわけではないから、どうでもいいことだが、自分の居場所がないということ、言わば、「余所者」ということが、むなしさの原因なのかも知れないと思う。 悪いことをして、自分の住んでいたところから追い出されるとか、不法滞在で国外退去を求められるとか、あるいは、昔は、所払いなどと言うことが有ったと聞く。居場所が無くなるのはメールボックスさくら この頃毎年のように繰り返すことだが、今年の天候は例年とは違っていた。雪の降りようも尋常ではなく、随分雪の被害のあったところもあった。五メートルを超す積雪もあった。かと思うと、三月に春を通り越して、夏日になったり、いつまで経っても天候は定まらなかったし、今後もどうも落ちつきそうにない。三月は暖かいときが多かったために、桜の開花随分早まった。開花後も気温の低い日が続けば、桜が長持ちすると思ったが、そうはいかなかった。 今日、四月十七日、高山は丁度桜が見頃で、今週末が、一番だと言っていた。名古屋などとは大違いだ。しかも、今までうっかりしていたが、高山市は町村合併で市域が随分広がり、全体は、東京都並なのだそうだ。だから、まだまだ高山市内といっても蕾状態の所もあるのだそうだ。 桜も種類は随分多いから、この名古屋市内でも、早くから咲いているところがある。ソメイヨシノが咲く頃にはもう散り出すほどになっている。 環状線の、瑞穂区内には八重桜がいかにも重もた苦しそうに咲いていた。花にしても、何でも沢山咲けばいいというのでもないようだ。作り物の花みたいで、咲いている花には悪いが余り感心しなかった。 二日前のこと、日当たりのいいところでは、牡丹が散りかけていた。拙宅のは未だ蕾状態、学生時代のことを思い出すが、丁度連休最後の頃、長谷寺に牡丹を見に行った。その時丁度見頃だった。そうすると今年の牡丹は相当早いことになる。 そう言えば、今年は、お茶も既に一番茶の市が開かれ、毎年最高値で落札する地区のお茶が、今年も又最高の値段を付けたと言っていた。この、お茶も、三月暖かったので、例年になく早くいいお茶が取れたと言っていた。 もうトンボが出ていたという報道もあった。 天候によって色んな事が左右される。日本では、ラジオで一日何回天気予報を放送するんだろう。私など、ラジオもテレビも天気予報とニュースがすこしでいいとさえ思う。それほど天候には関心を持たざるを得ない。インドネシアに滞在していたとき、こんな天気予報は耳にしなかった。必要ないからだろう。この二三日、日本各地では、夏日になるところさえあった。北海道では未だ雪が降っているのに。ところが、この暖かさも、明日まで、明後日からはまたまた寒気の南下で寒くなると言う。(T 4月17日)

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