かけはし No.306
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- 15 -魔言 難しい舵取り 2012年8月16日、NHKのニュースで、北京のオダ記者と称する人の発言だ。「・・・むつかしい舵取りが必要だ。・・・」と。「舵取りが難しい」というのならいい。「難しい舵取りを迫られそうだ」ということなのだろう。最大限その言葉遣いを生かして言えば、「難しい舵取りが必要になりそうだ」とか「難しい舵取りが必要になるかも知れない」なら良かろうが、「難しい舵取り」は「必要」なのではない。うっかりミスなのだろう。 冬にしては この冬、寒さの到来が早い。地球温暖化が言われているのに、一方では、氷河期に近づいているというようなことを耳にする。その真相を知りたいが、今は、聞いたまま、書いている。何日だったか、メモがないが、気象予報士が、朝の番組で、「冬にしては強い寒気が近づいている」と言った。冬だから寒気が襲うのであり、「冬にしては強い」などというのはおかしな話だ。尤も、その真意は、未だ初冬なのに、初冬としては通常よりは強いということが言いたかったのだろう。分かっていながら、こんな事を書くのも気が引けないわけではないが、やはり、自分の思いということは、正確な言葉にして欲しいと思うから、言うのである。12月初めの頃のことだったので、私はこんな風に善意に理解したが、いつでも善意を期待できるわけではないのだ。 ほおばる ラジオ・テレビの放送では各地の行事で、色々な物を食べることがよくある。それを大抵「〜を美味しそうにほおばっていました」などという。この言い方、私は余り好きではない。皆さんどう思いますか。多分、放送でこの言葉を使うのは、「食べる」というのが余りに直接的で、品がないとでも思われているのだろう。それでは「ほおばる」はそうではないのか。口いっぱいに物を入れて、頬をふくらませている状態こそ、品のない表現ではないのではないかと思うのだが。 一段落 これを「ひとだんらく」と読む人が意外に多い。ワープロでも「ひとだんらく」で「一段落」とちゃんと出てくるから、余程これが普及しているのだろう。NHKの例では、一寸古いが、2012年7月11日クローズアップ現代で、「子育てがひと言葉遣いあれこれだんらくして」と言っていた。もう、枚挙に暇無いのだろうが、私には一寸抵抗がある。総じて、数字が出てくる言葉は、発音も、書記も共に乱れている。「ひとつ」を平気で「1つ」と書く。無駄な抵抗なのかも知れないが、此にも抵抗がある。 耳障り 「耳障りがいい」などと言うのを聞いた。変な言い方だ。私が、学生時代に、こんな事を言ったら、先生にどやされただろう。今は、マスコミで大手を振って通用する時代だ。「耳」に「障って」でいやなのを言うはずの言葉、「目障りだ」というのも同じだろう。見た目のいいことを「目障りがいい」とはまだ言うまい。それに対して「手触り」の場合は、もう、ほとんどニュートラルだ。手触りがいいのも悪いのも特に気にならなくなっている。個人差もあろうが、これは私の感覚だ。 (T)

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