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ドイツ語学習のためのアドバイス
小坂 光一(国際言語文化研究科)

第I部 ドイツ語学習の第一歩は辞書選びから 第II部 参考書を一冊ゲットすれば、気分はフルにドイツ語! 第1章 独和辞典に親しもう


第I部 ドイツ語学習の第一歩は辞書選びから
写真 「ドイツ語は英語などと比べて習得が楽だ」などと言っても信用しない人が多いかもしれませんね。格変化は英語よりも多いし、名詞には男性、女性、中性のような「性」があります。そういう意味では確かにとっつきにくいかもしれません。しかし、実際に「聞く」、「話す」ということを念頭においた場合は比較的楽な言語であると言えましょう。音がはっきりしていて聞き取りやすい。単語と単語の境目がはっきりしている。話すときは、日本語のように、主語以外の要素から話し始めてもいい。語順に関して言えば、主文の場合は「人称活用した動詞」と「否定語」以外は日本語と同じです。従属節の場合は、「接続語」と「否定語」以外は日本語と同じ順番になります。動詞や助動詞の位置すらも例外ではありません(日本語と同じですから、英語のほぼ逆になりますね)。
 1960年代あるいはそれ以前の学生用語の多くはドイツ語からの造語でした。「ドッペる」(留年する、落第する、失敗する、試験に不合格になる)、「ゲルピン」(お金がない)、「シャン」(美人)、「ウンシャン」(美人でない)、「バックシャン」(後ろから見ると美人)、「メッチェン」(女の子)、「キッセン」(キスする)などですが、今ではなじみのない単語になっているかもしれません。英語からの造語に移行したものもありますね。「ドッペる」→「ダブる」、「メッチェン」→「ギャル」のように。しかし、一度、比較的大きな国語辞典もしくは電子辞書の国語辞典を引いてみてください。これらの語(和製ドイツ語、以前の学生語)はちゃんと辞書に載っています。
 今でも「ゲレンデ」、「アイスバーン」、「ストック」、「リュックサック」、「アルバイト」、「ノイローゼ」、「エネルギー」、「ワンダーフォーゲル」、「ヒュッテ」、「カルテ」、「クランケ」などならば多くの人にわかるでしょう。
 完璧にマスターしようと思ったら何語であってもむずかしいでしょう。外国語を完璧にマスターしようなどと思わない方がいいと思います。そんなことは無理です。そんなことを考えていたら、いつまでたっても使えるようにはなりません。完璧主義は習得の敵。習ったらまず使ってみましょう。外国語は「苦痛の種」としてではなく、「楽しみの源」として勉強すべきです。そのためには片言でもいいからまず使えるようになることです。
 ドイツ、オーストリア、スイス、リヒテンシュタインなど、ドイツ語を公用語としている国は案外多く、ドイツ語の通用する範囲もヨーロッパでは意外に広いのです。ヨーロッパで英語を使う国はどこでしょうか。考えてみてください。イギリスはもちろん英語ですよね。しかし、イギリス以外にどこか思い当たる国がありますか。中・東欧地区では英語よりもドイツ語の方が通じやすいとも言われているくらいです。
 クラシック音楽の宝庫で使われている言語、ドイツ語を気軽に学んでみましょう。


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第I部 ドイツ語学習の第一歩は辞書選びから
 ここで述べることは何もドイツ語に限ったことではありません。何語であっても同じです。とにかく、外国語の練習では間違いを恐れてはいけません。上でも述べましたように、完璧を目指していたらいつまで経ってもそのことばを使うことができません。完璧になんかなるわけがない、と考えておく方が無難でしょう。ことばはコミュニケーションの手段であることを忘れないように。
 まず、反応の速さが大事です。たっぷりと時間をかけて、長い沈黙の後で正しい発話をしたとしても、それはコミュニケーションとは言えません。間違いを恐れないで、素早く反応する習慣を付けましょう。「知識を蓄える」ことよりも、「当該言語ができるようになる」ことの方がはるかに大切です。「何でも知っているけどほとんど何もできない」ことと「何も知らないけれどもほとんど何でもできる」こと、そのどちらを選びますか?
 以下に私なりの学習法について述べます。
予習に時間をかけない
予習は時間がかかります。時間がかかっても、それ相応の効果があればいいのですが、効果はあまり期待できません。むしろ、復習に時間をかける方が効率的です。復習ならば予習の5分の1ぐらいの時間で済むはずです。復習する場合は「口をきちんと開いてはっきりと正確に発音する」ようこころがけてください。必ずしも大きい声を出す必要はありませんが、ごまかさないではっきりと何度も発音することが大切です。うまくいかないときは、初めは単語単位で、次に語句単位で、さらに句単位、センテンス単位というふうに拡張していくといいでしょう。その際、スピードやメロディをちゃんと守ることも大切です。このような練習を続ければ、そのうちに覚えてしまうでしょう。2回や3回の練習では上達しません。多くのことを数回練習するよりも、必要最低限のことを10回、20回と練習する方が効果的です。
むやみに辞書を引かない

辞書を引く前に、自分なりに内容や文法構造などを想像し、何かを発見する喜びを味わってください。辞書を引く癖がつくと、会話のときですら辞書を引かなければ気が済まなくなります。辞書を引きながらの会話なんてあり得ませんよね。うろ覚えでもいいからどんどんドイツ語を使うことです。初めは意味なんかわからなくてもいいです。「ことばそのもの」(意味の入っている入れ物)を練習する必要があります。しかし、確認するために後で辞書を引くことはいいことです。だから、辞書も1冊は持っておくべきでしょう。

いちいち日本語に翻訳しない

実用的な観点から言えば、「このドイツ語は日本語ではどういう表現に当たるのだろう」、などと考える必要は全くありません。ドイツ語を学習するときはむしろ日本語を忘れてください。2言語を同時に処理しようとすればそれだけ負荷が大きくなります。ドイツ語学習のときは日本語や英語を忘れて、ドイツ語だけに専念しましょう。

文字にたよらない

日本人は文字に頼る傾向がありますね。たぶん、高校までの英語学習の癖でしょう。しかし、ことばの基本は「音」です。ドイツ語を練習するときはまず「耳で聞いて口で発音する」ことが大切です。極端な言い方をすれば、文字を全く知らなくても会話はできます。日本人の子供が日本語の文字を習う前に苦労しないで日本語を話す。これは当たり前ですね。外国語も同じです。ただ、辞書で確認するためには文字が必要ですけどね。

 授業を中心にして効率良く学習を進めてください。「苦労することが勉強だ」と勘違いしないでください。効果が同じならば楽な方がいいに決まっています。楽をしてできるようになるならそれに越したことはありません。

 ただし、以上において述べたことは「私の学習法」、「私の教授法」です。自信をもってお勧めできる方法ですが、授業担当の先生のやり方と相反するようでしたら単位が取得できなくなってしまいます。その責任は負えません。結果的にドイツ語ができるようになれば誰も文句は言えないはずですけどね。
 
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第I部 ドイツ語学習の第一歩は辞書選びから

写真 辞書はそれぞれ長所・短所があり、どれが一番いいかは一概に言えません。また、その長所・短所もすぐにはわかりません。それは長く使った結果わかることです。値段も大差ありません。従って、生協の店頭で、一番気に入ったものを購入するといいでしょう。
 参考書は学習の目的に従って選ぶ方がいいと思います。例えば、実用話しことば習得のため、検定試験受験のため、など。

以下は中嶋忠宏名誉教授によるていねいな解説です。ご本人の了解を得て掲載しますので、必要な人は参考にしてください。

辞書
  • パスポート独和・和独小辞典』(白水社、2,940円)
    収録されている語数が少なく単語帳のようで、学習用辞書としては薦めにくい、と初見では思ってしまう。ところが、けっこう使い勝手がいいのだ。活字が大きめでレイアウトも見やすく、持ち運びにベンリーで、手によくなじむ不思議な雰囲気と存在感をもっている。その品格はなかなかのもの。電子辞書に語数では負けても、その他の点では太刀打ちできる、コンセプトのある辞書といえる。こんなにコンパクトながら、な、な、なんと、ドイツで使われているポケット・ティッシュの商標Tempoまで載っている!逆に、初学者にはHabilitation(大学教授資格取得試験)は不要ではないかとも思う。付録の《ジャンル別語彙集》は図解入りで、限られたスペースの割には各分野のタームをきめ細かく集めている(付録ではなく、本体かも)。〈独和+和独+ジャンル別語彙集〉で三位一体のこの辞書は、内容もさることながら、ただ持っているだけで満足できる、魅力に満ちた辞書。まるでiPod Miniみたいな感覚なのだ。本格的に使いこなすには不十分であるけれど、どこにでも楽々持っていける可愛い本書で、ドイツ語が楽しく、気持ちよく勉強できればメデタシ、メデタシ!
  • エクセル独和辞典』(郁文堂、2,800円)
    コンパクトなボディながら用例が豊富なのが最大の特徴。用例が多いということは、独作文をするときにも大助かりということ。要所要所に類語や文法説明のカコミ設けられていているのも親切。付録の《人称変化表、格変化表》、《文法キーポイント》も予習・復習にぜひとも活用したい。辞書こそは、単語の意味を調べるだけではなく、教科書を総合的に理解するためにも最良の相談相手になってくれるということを、本書で実感してほしいものだ。
  • 新アルファ独和辞典』(三修社、3,600円)
    重要語は特に大きな赤色の活字で印刷してあり、見やすく眼にやさしいレイアウトは他にならぶものがない。イラストや写真を配置してあるのも楽しい。特定の重要単語にかぎって見出しのあとに付けられた《人称変化(動詞)》や《格変化(名詞等)》の表を活用すれば、「イッヒ・ビン、ドゥ・ビスト……」もばっちり。その分だけ語数の少ないのはやむをえないけれど、例文や用例はいずれも教室での授業にそのまんま役立つようなものばかりで、初級テキストの学習には〈即戦力〉となるだろう。
  • プログレッシブ独和辞典(第2版=改訂新版)』(小学館、3,800円)
    コンパクトながら実に良くできた学習独和で、感心させられる。まさに「いい仕事してますねー!」である。派生語や合成語もイッパツで検索可能。いい気分である。《言い換え欄》、《複合語欄》、《類語欄》、《関連語欄》、《語源欄》が随所に設けられていて付加価値を高めている。改訂新版がリリースされて、レイアウトが良くなり、いっそう使い勝手が向上した。《類語使い分け表》や《機能動詞欄》といった新工夫も盛りこまれている。海は海でも、太平洋や北海、地中海の〈海〉はそれぞれドイツ語でなんと言えばいいのか、《類語使い分け表》が教えてくれる、といった具合。弟分にあたる『ポケット・プログレッシブ独和・和独』(3,000円)もおすすめ。活字が小さいのはガマンするとして、使い勝手がよく重宝する。ポシェットやハンドバッグに楽に入るので、今日からこれでドイツ語の〈モバイル〉をやろう!小学館の独和は、ポケット版から後述の『独和大辞典』まで3種類のサイズのヴァージョンがラインナップされていることになる。〈スリーナンバー車から軽自動車まで〉揃っているのは、独和辞書界ではここだけ!
  • 新アクセス独和辞典』(三修社、4,000円)
    第1章であげた『新アルファ独和辞典』を拡大・深化させた充実の初級・中級向け学習用独和辞典。旧『アクセス』のリニューアル版。わかりいい説明と豊富な例文には目を見張らされる。和独の部がいっそう充実したのは今回の改訂の大きな点で、名実ともに発信型の辞書に進化している。古典から現代ドイツ語までをカバーするオールマイティなヤツ。付録の《発信型和独語彙集》や《図解辞典》が光っている。とりわけ、《ドイツ語圏の情報》は秀逸。たとえば、ドイツ人が毎日どんなものを食べているのかを説明した頁などをごらんあれ!……気分はもうドイツである。CD-ROM版として『ハイブリッド・アクセス独和辞典』(Win /Mac対応)が用意されている。検索エンジンロボワードが付く。
  • 新アポロン独和辞典』(同学社、4,000円)
    学習用独和として定評のあった前身の『新修ドイツ語辞典』をベースにした息の長い歴史をほこる辞書。このシリーズはこれまでこまめに改訂が行われ、最新語を積極的に取り入れてきている。な、なんと、パソコン用語のherunterfahren(シャットダウンする)やtelnetten(テルネットする)までのっている!『新アポロン』は類書を抜いてぶっちぎりで新しいのだ!巻末付録は《福祉用語》まであり、じつにユニーク。《コンピュータ・ネットワーク用語》、《環境用語》、《医療・看護用語》等は理系の原書講読に役立つだろう。他の辞書にはないFourierreihe(フーリエ級数)だってちゃーんと調べられるッツーわけ。《和独の部》、《日常会話・手紙の書き方》は、それぞれ初級の独作文や会話なら不足はしない。《ドイツの言語・社会・文化・歴史》に目を通せばキミはもういっちょまえのドイツ通といえる。
  • フロイデ独和辞典』(白水社、4,000円)
    このクラスでは、いっとう新しい独和辞書。話法の助動詞sollenをひっぱってみると、用例が充実しているし、おまけに命令文を間接話法に書き換えるときの要領や、muessenとの相違などじつにきめ細かな説明までついていて完璧。Bildschirmschoner(スクリーンセーバー)やbrowsen(ホームページを見る)といった最新語も多数収められている。随所に文化的な記述も盛り込まれていて、百科事典的にも使えるのは便利。付録も充実している。なかでも《聖人暦》や《ドイツ歌曲選》などは独和辞典で初めての試み。語数も7万5千語と多く、立派に中級辞書の貫禄である。全体として辞書の作りに白水社のお洒落な感覚がよく表れていて、いつまでも〈歓び〉をもって使えるだろう(フロイデ=Freudeとは〈歓び〉の意)。
  • クラウン独和辞典 CD付き』(三省堂、4,200円)
    三省堂の総力を結集して実現した学習用独和。一見初心者用のやさしい顔立ちであるが、なかなか奥行が深い。詩人のCelan(ツェラーン)ものっているのは、なかなかイキである。餃子によく似たドイツ料理のMaultascheまで出ていて、ドイツを旅行したとき、現地のレストランでも役に立つだろう。文法説明もぬかりがない。〈Von Mensch zu Mensch〉(=うち解けて)のMenschが無格である点に触れて、〈聯語(れんご)〉として詳しく説明しているのも評価できる(研究社『独和中辞典』、同学社『新アポロン』にもコメントあり)。形容詞のvielも英語のmanyとmuchに対応させて説明しているのは分かりいい。中級の読物を予習していると、よくrichtunggebend とかrichtungweisendといった合成された形容詞・副詞が出てきて、慣れないと雲をつかむように理解しづらいだろう。ドンマイ!両方ともぬかりなく調べられる。付録の《文法小辞典》は希少価値あり。《動詞変化形索引》も頼りになる味方、あしたの分の予習もこれで完璧。 *辞書本体のCD-ROM版も出ている。「第一部 第4章 電子辞書を使うべきか?」参照のこと。
  • 新コンサイス独和辞典』(三省堂、4,000円)
    昔からの伝統をほこる旧『コンサイス独和』が全面改定されて装いも新たに登場したニューフェース。内容的には旧版を踏襲しているので、申し分なし。それでいて、こんなにコンパクトになってしまっているのは驚異的。片手にらくらくと納まってしまう。この片手に納まる――というのはとても大事なことで、またアリガタイことである。いくら立派な辞書でも手が疲れるようだと能率がよくない。結局、学習用辞書との相性は、内容もさることながら、〈手との相性〉ということにつきるのだ。外国タバコのような表紙のデザインが意外とシャレていて、スマートに辞書を引きこなしたいキミにはイチオシ。
  • マイスター独和辞典』(大修館、3,900円)
    ワインやビールの種類までわかるといった百科全書的な性格を兼ね備えた総合タイプの独和。ベースになる語義部分の構成や図解の方法も極上の仕上がり。あちらこちらでイラストや図表が立体的に張りめぐらされていて便利。たとえば、《複合語》の説明はまことにユニークである。つまり、Fahrtに前綴りabをつけてAbfahrt=〈出発〉、ausをつけてAusfahrt=〈発車〉といったように造語関係が一目瞭然。語彙も驚くほど豊富で、中・上級まで使える。〈初心者〉を意味するEinsteigerが載っているのは、不思議なことに独和では『マイスター』と以下の『ハンディーマイスター』だけ。文字どおりマイスター・クラスの貫禄あり。ただし、この辞書を使用する場合、性の区別が前についた定冠詞の形で示されている点と、他動詞・自動詞の区別が明示されてない点は類書とは違うので注意を要す。「+4格」が他動詞のしるし、それ以外は自動詞と思えばよい。なお、本書を手のひらサイズに縮小した『ハンディマイスター独和辞典』(3,600円)も用意されている。文字どおりハンディで、携帯にはすこぶる便利。驚くべきことに、ひとまわりもふたまわりもチッチャなサイズながら新語を15,000語もプラスしているので、この子は親を越えている――出藍の誉れとはこのこと。ただし、字が小さいので、視力に自信があることと、例外的な場合をのぞいて、発音記号が省略されているので、発音規則をマスターしておく必要があることの二点がクリアできれば、こんなに重宝するものはない。ドイツ、オーストリア、スイスへの旅行には最適。アイヴォリー・ホワイトの表紙がまぶしい!
  • 新現代独和辞典』(三修社、3,800円)
    古典作品から現代文学や新聞・雑誌まで広い範囲をカバーできる実力派の辞書。付録の《修辞法》、《韻律法》は類書に例がない独自のもの。《分綴法》、《句読法》とともに、とりわけ人文系のテキストの深い読みのために活用できる。新語が多く取り入れられているのが、ひと味ちがうところ。上記の『マイスター独和』と同様に Bolzplatzといった最近の俗語を載せているのも新しさへの対応といえよう。もっとも、「むちゃくちゃな試合のサッカー競技場」という訳語はもう一工夫ほしいところ。一方、jn zum Ritter schlagen(刀礼を施して騎士に叙する)なんて古めかしい言い方も載っていて、騎士物語を読んだりするときに大助かり。ともあれ、内容もさることながら、手に持ったときの感触もなかなかヨロシイ。それに、活字の見やすさは抜群。◆印の《用例》や▲印の《関連語》といったレイアウトのうまさは目の健康によい。CD-ROM「Bertelsmann新正書法辞典」(WINDOWS版)付も出ている。(*^_^*)
  • 独和辞典・第2版』(郁文堂、4,300円)
    旧版を全面改訂してリリースされた〈決定版〉独和。旧版の利点をすべて踏襲したうえで、印刷の調子も改善されたので、ずいぶんと見やすくなっている。豊富な例文とともに、文法説明も充実していている。見た目には地味で目立たないけれど、随所にしかけられた、さまざまの改良・工夫は専門家からも高く評価されている。〈通〉向きの独和なのだ。ドイツ語独特のニュアンスをもつGemuetやWesenも、まず〈心〉や〈本質〉といった具合に基本となる訳語をひとつだけにしぼって、委細は用例によって理解させるやり方は実に明快である。gehen(英語のgo)のように長々と語義説明のつづくものも、ゴチックの数字で区分されたとおりに見ていけば、意外と楽にサーチできる。控えめな外観ながら中身の濃いこと!能あるタカは爪を隠すのである。それにしても、この辞書は目が疲れる。もうすこーし見やすいレイアウトにならないものか?
 
その他の辞書たち――ドイツ語辞書の鉄人になろう!
 中級から上級に進むキミには、とっておきの独和を薦めたい。

  • 独和中辞典』(研究社、4,120円)
    語数2万語の本格的な和独がついた中辞典。独和と和独のドッキングは、独英と英独が合体しているといったふうに欧米の学習用外国語辞書ではあたりまえのスタイルである。本書は独和も和独も、用例が多いのが一大特徴。和独の部も活用すれば、読解に役立つばかりか、作文するときにも重宝する。たとえば、「おもう」を引いてみると、glauben, meinen, denkenの違いがじつに分かりやすく例文で説明され、さらに推測をするときに使うannehmen, vermuten……と続く。和独の部が、独和の機能も果たしている。動詞tunも、和独の部の「する」を参照するようにとの指示があり、machenとの違いがわかるようになっている。つまり、独和が和独を、和独が独和を、それぞれ補っているのだ。これぞまさに、〈ドイツ語活用辞典〉と言ってよい。こうした独和と和独との連携あるいは一体化は、インターネットで使用されるハイパー・テキストのリンケージの技法を使えば、ずっと効率よく具体化できるだろう。デジタル化できればすばらしいものになるはずだ!この辞書は、そうしたアイディアの提起という点では独自のもので、賞賛にあたいする。
  • 独和大辞典第2版』(小学館、23,000円)
    最最大の語彙数をほこる独和辞典界の横綱である。die moebiussche Flaeche (メビウスの帯)、 Angelologie(天使論)もこの辞書でようやく調べがつく。Wettkampfgymnastik(新体操)が他の独和には出ていなくって、本書のみ収録しているのは意外や意外!でも、この辞書にはでているのだ。Jetzt wird geschlafen!(さあもうねんね)といった例文もあり、表現辞典としての価値も高い。Guten Tag!も「(日中のあいさつとして)こんにちは、いらっしゃいませ、お帰りなさい;ただいま、行ってまいります、行ってらっしゃい;(拒絶の返事として)とんでもない;冗談じゃない;まっぴら[ごめん]だ」との説明があり、見事というほかはない。ただただ脱帽するのみ!オオキイことはイイことなのである。要所にイラストもついているし、また説明があまりに長く、詳細になる基本語は見出しの次のカコミに要点が整理してあるなど、分厚い割に使い勝手はよい。なお、内容はそのままで版型を縮小しただけの『独和大辞典[コンパクト版]』(7,500円)も用意されている。活字が見にくくなったのは我慢するとして、なによりも値段の安いのがありがたい。専門文献の解読のみならず、ドイツ語のクロスワード・パズルをやる時にも必携の一冊である。

  • 和独辞典は意外と使い方がむずかしく、最初はなくともかまわないが、ぜひとも一冊欲しいとなれば、以下の2点から選べばよい。

  • 和独辞典』(郁文堂、3,400円)
    見出し語にひらがな表記方式(五十音順)を採用した元祖。ローマ字表記よりも馴染みやすいだろう。サイズも手頃で使い勝手はよい。語数はこれくらいでいいのだ。付録の《手紙の書き方》や《会話慣用表現》もコンパクトながら実用的価値は高い。《文型一覧》はユニークで、ドイツ語の文章感覚を養うのに活用できるはず。なお、本体部分で〈楽譜〉や〈手〉、〈天気図〉のように関連する語彙を図解して一括表示しているのはドイツの『ドゥーデン図解辞典』のやりかたで、このアイディアはもっと多用してもよいのではと思われる。
  • 新コンサイス和独辞典』(三省堂、4,200円)
    旧版を全面改定したリニューアル版でコンサイスの和独辞典もイメージ一新。見出し語が、郁文堂の『和独』にならって五十音順のひらがな表記に改められたのが大きな変更点。新語や専門語も多く取り入れられているので充実度アップである。〈花粉症〉や〈納豆〉、〈雛祭り〉も載っているし、〈ぼちぼち〉や〈ちやほや〉、比喩的用法としての〈天狗=てんぐ〉も詳しい。『新コンサイス独和辞典』と肩を並べればまぶしいツーショット、しかし、『クラウン独和』とも結構なコンビとなるだろう。
     教室の授業で、英語とドイツ語がいろいろの面で親戚みたいに近い関係にある、といった話を聞くことがあるだろう。両方とも印欧語族ゲルマン語に属する。そんな意味からも、英語に強いキミにも、英語に弱いキミにもぜひとも独英辞典を使ってみてほしいものだ。
  • 以下は、独・英、英・独、独々など。
  • The Pocket Oxford German Dictionary』(0xford Univ. Press)
    独英・英独が一巻にセットされている。両部とも用例を極力省略し、しかも訳語が厳選されているので、初心者にはかえって使い勝手が良い。詳しい用法は独和で調べればいいのだから。このポケット版で物足りなくなったら、同じオックスフォードの系列でConcise版やStandard版へとグレード・アップできる。
  • Langenscheidt社の独英・英独シリーズも手ごろである。ポケット・サイズのものからデスク・サイド版まで種々のエディションがある。購入にあたっては洋書店で実地調査するとよい。黄色の地にブルーのL字が浮かんだ表紙が目印。

  • Cassell's German-English / English German Dictionary』(Macmillan, New York)
    ショコラ色の表紙で、サム・インデックスの付いた造本がシブイ。米国マ社で出版されているにもかかわらず、Zentrumはcentreのみ、Arbeitもlabourのみ、Aufzugはliftが先に出てくる、といった具合で、中味は頑固なまでに英国風。熟語・合成語の表示が見やすく、活字やレイアウトも鮮明で実に使い勝手がいい。

  • 0xford-Duden Bildwoerterbuch - Deutsch und Englisch』(Dudenverlag)
    すべてイラストで事物を確認できる図解辞典。ただし、収録されているのは名詞だけ。

    ドイツ語に取りつかれてしまったキミには、独々辞典の使用をすすめたい。英々辞典を使いこなしているキミなら、独々の効用については言うまでもないことだろう。
  • ビギナー向けのものが諸種でているけれど、手軽に扱えるものとして、
  • Langenscheidts Grosswoerterbuch Deutsch als Fremdsprach』(Langenscheidt)をあげておく。〈Deutsch als Fremdsprache〉――つまり、ドイツ語を外国語として学ぶという観点から編集されているので、親しみやすい独々辞典となっている。
  • ドイツ語の百科辞典入門も兼ねて、
  • Der Brockhaus in einem Band. Neu von A bis Z』(Brockhaus) あたりに親しんでほしい。

参考書
  • 関口一郎『マイスタードイツ語コース』(1文法、2表現、3語法、大修館)
    セキグチ先生のマイスター三部作。まるで教室で授業を受けてるみたいな話をしっかり聞いているうちに、自然にドイツ語が分かるようになる。再履修のキミにもウ・ッ・テ・ツ・ケ!第3巻の『語法』は中級・上級向け。
  • 小坂光一『マニュアルドイツ語ABC』(郁文堂)
    〈マニュアル〉と銘打っているけれど、パソコンやワープロの〈取り扱い説明書〉よりはよほど親切で分かりやすい。説明がビジュアルになっているので、試験直前の復習と整理にも重宝するはず。
  • 早川東三『NHKドイツ語入門・第2版』』(日本放送出版協会)
    ドイツ人の生活に即した平易で基本的な文を読みながら、ドイツ語を楽しく、総合的に学べる。
  • 浜川祥枝『ドイツ文法の初歩』(白水社)
    接続法の説明も懇切ていねい。親しみやすい充実した文法書。索引も完備。
  • 三瓶慎一『CDで学ぶドイツ語入門』(白水社)
    CD付きのユニークなドイツ語入門書。何がユニークといっても、「駅のアナウンスやCM、ニュースやオペラ公演の案内など、臨場感溢れる音の数々を収録。こんなCD、聴いたことない」がユニーク。完了形を作るときにどうして助動詞のhabenとseinの区別があるのか、どうして英語にはないのか……といった、類書には見られない文法や語法の説明がさりげなく書かれているのもまたユニーク。ユニークてんこもりで、中級や上級を自負する向きにも役立つ。どんなことでも常に初心に立ち戻ることは大切なこと!
  • 中島悠爾・平尾浩三他『必携ドイツ文法総まとめ』(白水社)
    初心者も中級の学習者も、文法事項であやふやさを感じたとき、手際よくアドバイスしてくれる強い味方。名詞の格の用法もしっかりまとめられているし、奥が深い接続法の用法も、これで全体の見取り図が理解できる。コンパクトながら、中身は充実しているのだ。バッグに入れても邪魔にならないサイズで、持ち運びも楽な〈ドイツ文法ハンドブック〉としておすすめ!
  • ミッヒェル他『これからのドイツ語』(郁文堂)
    斬新な視点から書かれていて、内容も面白く、ついつい読んでしまう。
  • 濱川祥枝『現代ドイツ語』(白水社)
    文例が豊富。索引完備。
  • 在間 進『ドイツ語文法』大修館)
    代名詞が半ば過ぎてから出てきたりで、教科書の進度には合わないけれど、文法現象をこうした視点から見なおしてみるのも勉強なのだ。
  • 関口存男『接続法の詳細』(三修社)
    ツウ向け。接続法の勉強のみならず、ドイツ語のさまざまな現象を解明するための展望を与えてくれる古典的名著。本書を通読できれば、ドイツ語の文法は免許皆伝!

 英・独を比較しながらというのは、両者の歴史的な関係を考えただけでも有効な勉強の方法であろう。

  • 福田幸夫『英語活用・ドイツ語入門』(白水社)
  • 佐々木傭一『新英語から入るドイツ語』(郁文堂)
    単に英語との比較だけではなく、nichtとkeinの使いわけや、形容詞の格支配の説明等 、随所にユニークネスが見られる。
  • Eggeling『Dictionary of Modern German Prose Usage』(Oxford at the Clarendon Press)
    例文の多くがドイツ文学作品から引かれているのは魅力。文法の基礎ができていればどんどん読んでいけるだろう。スルメのように噛めば噛むほど味が出てくる、価値ある一冊。
  • 解釈力を養成するためのものとして、
  • 小栗 浩『独文解釈の演習』(郁文堂)
  • (現在は改訂版として、青木一郎「わかりやすいドイツ語の構文と解釈」が刊行されている)
  • 信岡資生他『中級ドイツ語の研究』(朝日出版)
  • 有田 潤『文法復習・やさしい独文解釈』(三修社)
  • 横山 靖『独文解釈の秘訣 I,II』(郁文堂)
    大学院入試等の〈傾向と対策〉として定評がある。
  • 特殊なものとして、
  • 森 五郎他『医科のドイツ語』(郁文堂)
  • 青木他『理工科のドイツ語』(郁文堂)
    ……上の2冊とも対訳式。取り上げられている文章が古めかしいものばかりで、DNAやニュートリノの話題こそ出てこないけれど、自然科学の論文を読むための基礎訓練に役立つだろう。
  • 上田浩二『ふれあいのドイツ語』(白水社)
    独作文というと気が重いかもしれないが、本書ではそうした心配は無用。かつてNHKテレビ講座で好評を博したウエダ先生から楽しいお話を聞きながら、コミュニケーションの時代にふさわしい、生きたドイツ語表現の基礎力がつく。
  • 岩崎英二郎『会話風やさしい独作文』(第三書房)
    独作文のコツを、まるで手品の種明かしをするように教えてくれる好著。
  • 伊藤/クルマス『ドイツ語表現辞典』(朝日出版)
  • 関口一郎『ドイツ語表現ハンドブック』(白水社)
  • イシュトヴァーン『ドイツ基本語活用辞典』(第三書房)
    ……上記の辞典とハンドブックの3冊は、独和辞典のところで取りあげるべきかもしれない。辞典のスタイルではあるけれど、独作文の練習書として使う手もあるだろう。
  • 宮内敬太郎『ドイツ語の手紙』(白水社)
  • 岡島孝一『楽しいドイツ文手紙の書き方』(郁文堂)
  • 村田・インゲボルク『改訂・標準ドイツ会話』(白水社)
  • 石川・サスキア『ドイツ会話40章』(白水社)
  • W.ミヒェル/新保『ドイツ トラベル会話』(郁文堂)
    出色のドイツ語会話ハンドブック。トラベルのみならず、ドイツ生活の様々な場面についての解説が詳しく、気の向くままにひもとくだけでも楽しい!付録にCDが付いているのも、会話の書としては当然のこと。
  • 在間進『携帯版ドイツ語とっさのひとこと辞典』(株式会社DHC)
  • 在間進/亀ヶ谷昌秀『独検合格 単語+熟語1800』(第三書房)
    独検にも果敢に挑戦していただきたい。
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